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東大式・集中力の高め方

更新日:

東大入試レベルの数学の問題6題を、たった45分で解く集中力と、その高め方

 

東京大学理科Ⅲ類。ご存知の方が多いと思いますが、日本の最高学府と言われる

東京大学の中でも、最難関と言われる学科です。

確率で言えば、プロ野球選手になるのと同じくらいの狭き門と言えます。

 

なぜ私のような田舎者が、その最難関に合格できたのか?

 

その理由の一つが集中力なのです。

集中力が今までの私を支えてくれたと言っても過言ではありません。

では、私の言う集中力がどのようなものなのか。

 

たとえば、こんなエピソードがありました。

 

高校3年生の時、数学の勉強で東大入試レベルの問題を各分野からピックアップし、

合計6題を毎日解いていました。なぜ6題かというと、東大の入試問題が合計6題

出題されていたからです。なるべく実戦に近い方式ということで、

このようなやり方を採用していたのです。

 

ちなみに、入試本番の所要時間は2時間半でした。

6題の問題を解くのに2時間半。

そのくらい東大の問題は難しいと思っていただいて

間違いではないと思います。

 

さて、この東大入試レベルの問題を、私がどのくらいの時間で解いていたか?

 

なんと当時の私は、

問題を解いて答え合わせまでしても45分から50分くらいで終えていました。

そんな馬鹿な?と思われる方も多いと思います。

 

お前の頭は特別なんだろうと思われる方も、

当然いることでしょう。

 

そんな批判を敢えて承知で、このようなエピソードを紹介したのは、

私が特殊な人間でも何 でもないということを言いたかったからです。

 

これは誰でも可能な「技術」なのです。

 

今になって思えば、私はこの「集中力の高め方」を知らずしらずのうちに身につけていたのです。

そのおかげで、数学の問題を他の人よりも短時間で解くことができ、

残った時間を他の科目の勉強に回すことができたわけです。

 

試験時間2時間の東大入試の英語を1時間で解き終える集中力と、その高め方

東大入試の英語の問題は

分量が多いことで有名です。

ちなみに、最近の英語の問題をこちらの ウェブサイトで見ることができます。

↓ ↓ ↓

http://www.yozemi.ac.jp/nyushi/sokuho/recent/tokyo/zenki/eigo/images/mon.pdf

 

これを見ていただけば、かなりの英文量、かなりのページ数だということがわかります。

当時はヒアリングの試験はなかったのですが、

それを除けば、おそらく昔も今もあまり変わりない内容、そして分量だと思います。

 

普通の受験生は試験問題を見たとたんに、

量の多さだけで圧倒されてしまうぐらいでしょう。

 

私の場合、一浪して東大に合格したのですが、一浪の途中から、

この東大英語に関して「ある対策」をしました。

 

もともと英語は得意だったのですが、

この「ある対策」が功を奏し、模試の成績もさらにアップ。

科目別の成績優秀者によく名前を連ねていました。

 

そして、試験本番ですごいことが起きました。

 

私は特に急ぐこともなくマイペースで問題を解いて行ったのですが、

一通り解き終わって時計を見るとまだ1時間も経っていません。

 

東大英語の持ち時間は2時間です。

 

普通なら持ち時間2時間をフルに使っても

たいへんな試験だというのに、なぜか私は半分の時間で解き終えてしまったのです。

 

その後もう一度見直しましたが、

それ以上直す箇所は見当たりませんでした。

 

それで仕方なく残り一時間は寝ていました。

 

東大入試の本番だというのに、

机に突っ伏していたのです。

試験官は私のことをどう思ったでしょうか。

おそらく、全然問題が解けなくて諦めている、哀れな学生と映ったことでしょう。

 

本番での点数は公表されなかったので、この時の私の成績はわかりませんが、

数学で一問ミスをしたにも関わらず、無事に合格したところを見ると

そんなに悪くはなかったと思っています。

 

またこんな話を書くと、「人をおちょくっているのか?」と思われるかも知れませんが、

これも本当の話なのです。普段の私を知っている人なら、

私が特別頭の回転が速い人間でないことはよくわかると思います。

 

今になって思えば、受験時代に私が採った「ある対策」がとても理にかなっていたと言えます。

その秘密を早く知りたいでしょうか?

 

もう少しお待ちください。

後ほど詳しく解説していきます。

大学時代のレポートを、全て30分以内で完成する集中力と、その高め方

このように人並みはずれた(?)集中力を発揮した結果、私は晴れて東京大学理科Ⅲ類に

合格できました。しかし、大学入学後の私は正直言って、あまり勉強しませんでした。

 

授業にはほとんど出ず、友人たちとサークル活動をしたり、医学部の野球部で

野球に打ち込んだりしていました。東大では、最初の2年間は教養学部とい って

一般的な教養を学び、3年生から正式に医学部に進学します。

 

それから、本格的に医学に関する授業や実習が始まるわけです。

解剖、生理学、細菌学などなど、その内容は多岐にわたります。

大半が、初めて学ぶ内容ですから、真面目に授業に出ていてもたいへんなのに、

私のように授業をさぼっていたら、当然ついていけるはずがありません。

 

したがって、試験は一発で通過することは少なく、追試の常連でした。

試験だけでなく、多くの科目で、レポート提出も義務付けられていました。

こちらも皆四苦八苦しながらやっていたのですが、

レポートに関しては私はあまり苦労しませんでした。

 

担当教官の先生にはたいへん失礼なのですが、当時の私は

「レポートに時間をかけるなんて愚の骨頂」といった意識を持っていました。

これは今思えば、たいへん失礼な話で、若気の至りであったと反省してはいますが、、。

 

とにもかくにも、私はほとんどの科目のレポートを30分以内で仕上げていました。

これも普通に考えたら、ありえないスピードです。

でもいくつかのコツ、つまり持ち前の集中力を発揮することで、可能だったのです。

 

朝から晩まで手術に取り組める集中力と、その高め方

朝から晩まで手術に集中する

 

私は2008年末まで、東大病院の心臓カテーテルの

チーフを務めていました。

心臓カテーテルというのは、どういうものかというと、

直径2ミリ程度の細いチューブを人間の血管の中に通して行き、

心臓の検査や手術を行うものです。

 

心臓の周囲には冠動脈と言って、心臓の筋肉に血液を送る血管があります。

この血管の内腔といって、血管の内側はやはり直径が2ミリから4ミリ程度しかありません。

 

心臓を栄養する大事な血管にも関わらず、プラークと呼ばれる、コレステロールの

塊のようなものが血管の内壁に溜り、しばしば狭くなってしまいます。

血管の内側が狭くなると、心臓の筋肉に十分な血液を送ることができません。

 

そのような血液不足の兆候として胸が苦しくなります。

このような症状を狭心症と言います。

狭心症の場合、安静にしていれば症状が収まりますが、血管の狭窄が更に進むと、

ある日突然血管が完全に詰まってしまいます。そうなると心臓の筋肉に血液が行かないため、

放っておけば筋肉の細胞が壊死(えし)といって死滅してしまいます。

このような血管の狭窄や閉塞を解除する治療をカテーテルで行います。

 

そのためにはまず、ガイドワイヤーと呼ばれる直径0.1ミリ程度の非常に細いワイヤーを狭い

血管の中に通していきます。そして、このワイヤーに沿わせて、バルーンカテーテルという

先端に風船の着いた管を通します。血管が狭くなっている箇所でこの風船を広げ、

狭窄を解除するのです。更にはステントと呼ばれる金属の金網を血管の中に入れて、

一度広げた血管が再び縮まないようにしっかり広げるのです。

 

文章で読んだだけでも、何か細いものばかりで、たいへんそうな治療なのが

何となくわかっていただけるかと思います。

実際、ものすごく集中力を必要とします。

このような治療を毎日、朝から晩までやっていたわけです。

一例の治療時間は1時間から2時間。難しい治療だと3~4時間かかることもあります。

ものすごくたいへんなケースでは、8時間ぶっ通しで治療をしたこともありました。

しかも、途中で休む時間もほとんどありません。私の場合、昼食も摂らず、夜まで連続でした。

 

一日中、集中力を持続させる、、、、

なぜ、そんなに集中力を高められたのか?

 

このような非常に神経を使う手術を集中力が途切れることなく、一日中続く。

そういう体力や集中力というのは、生まれつきなものでしょうか。

特殊な人間にしかできない芸当なのでしょうか。

実はこうした集中力の持続にも様々な技術が必要なのです。

 

私も初めからこんな持続力(集中力を持続させる力)があったわけではありません。創意工夫の末に、

このような集中力を持続し、高める技術を獲得したのです。

 

著書1冊を1ヶ月で書き上げる集中力と、その高め方

私は今までに一般向けの書籍を6冊出版しています。そのうちの4冊は2010年の後半から

2011年の前半にかけてのわずか1年間に出版したものです。

私のような駆け出し?の作家としては異例のペースではないでしょうか。

 

しかも、一日に何時間も執筆に費やしたかというと、そうでもないのです。

一日に執筆にあてる時間はせいぜい30分から1時間です。

それでもだいたい1ヶ月で1冊分書き上げてしまいます。

 

もちろん、そのあとで校正だの、イラストだのでプラス1ヶ月くらいは必要になりますが、

いずれにしても、他の著者の方と比べるとかなり速いペースだと思います。

よく、締め切りに追われているとか、1週間ホテルに缶詰になって書き上げるなんていう話を

耳にしますが、私の場合はそのようなこととは無縁なのです。

 

これも、いままで再三述べてきたように、私が特殊な能力を持っているわけでも

何でもありません。様々な工夫を施した結果、このような「集中する技術」を獲得したのです。

今みなさんが読まれている、この本も同じ技術を使って書いているところです(笑)

 

2 集中力の定義

同じ作業をより短時間で仕上げるスピード集中(その集中力の高め方は?)

ここまで、集中とか集中力という言葉を注釈なしに使って来ましたが、

ここで改めて集中とは何か、集中力とは何かを考えてみたいと思います。

 

三省堂大辞林によると、集中とは「一か所に集めること。また、集まること。」とあります。

また、ウィキペディアによると、「集中力(しゅうちゅうりょく)とは一つの事柄に

注意を集中して物事に取り組む能力」とあります。

これまで私が述べてきた集中にまつわる話と、これらの定義は少し意味合いが

異なることがお分かりでしょうか?

 

「一つの事柄に注意を集中」とありますが、それはいったいどんな状態でしょう。

例えば、暗い部屋の中でローソクの日が一つだけ点っているとします。

それをじっと見続けることも集中です。しかし、現代の多忙なビジネスマンが

ローソクの火を見続けても、それだけでは集中力は高まりません!

そこで、本書ではみなさんが仕事や勉強において成果を上げるという点に

重点をおいた「集中の定義」を考えたいと思います。

 

前章で述べたような、数学や英語の問題を短時間で解くというのは、

言い換えれば「同じ作業をより短時間で仕上げること」と言えます。

多忙な現代人にとって、まさに無くてはならない技術です。

 

本書ではこれを集中の第一の定義としたいと思います。

そして、この「同じ作業を短時間で仕上げる」集中を「スピード集中」と名づけました。

 

長時間一つの作業に集中し続けるスタミナ集中。その集中力の高め方とは?

同じ作業を集中力を切らさずに長時間続ける、これも現代のビジネスマンにとって、

極めて重要な能力と言えます。

 

このような能力はスポーツの世界でも必須です。

ウィンブルドンなど、テニスのトッププレーヤーの試合を

テレビで見たことのある人は多いと思います。

男子のトップクラスの選手は、時には時速200kmを超える高速サーブを繰り出します。

そのサーブを打ち返すのにも、並外れた集中力と反射神経が必要です。

そのような激しい打ち合いを、延々と続けるわけですから、当然彼らは、

長時間一つの作業に集中し続けるスタミナと集中力を持ち合わせなくてはなりません。

 

ちなみに、2010年のウィンブルドン大会男子シングルス2回戦では、

3日がかり、計11時間5分という長時間の試合もあり、ギネス記録に認定されています。

このようなスタミナと集中力はどこから来るのでしょうか。

 

我々医師が手術をする時も、こうしたトップアスリートと同じような状況と言えます。

一つのミスが命取りになる状況が絶えず続く中で、常に集中力を切らさず、

手術という作業を長時間続けなければいけません。

 

ビジネスにおいても、同じような局面にしばしば遭遇します。

仕事の締め切りが迫った時、明日までに大量のレポートを仕上げなければならないような時には、

高い集中力と持続力が必要になります。

 

このように、長時間一つの作業に集中し続けることを

私は「スタミナ集中」と定義しました。

 

たくさんある仕事の中から一つだけに集中するセレクト集中。その集中力の高め方とは?

今まで述べてきたスピード集中やスタミナ集中は、いわゆる集中力の意味として、

多くの人がイメージするものでしょう。しかし、これから説明する

セレクト集中というのは、 前述の2つとは少し意味合いが異なります。

集中という言葉を英訳すると「concentration」という単語が出て来ます。

これがいわゆる集中力に相当するものですが、もう一つ大事な言葉で

「focus」という単語があります。

これも集中という意味ですが、より適切な表現としては、

「焦点を合わせる」という表現が当てはまります。

 

焦点を合わせるとはどういうことでしょうか。

焦点を合わせることと集中との関係はなんでしょうか。

 

わかりやすい例として虫眼鏡があります。

詳しい原理は省きますが、虫眼鏡は凸レンズでできていて、レンズを通過した光を

中心方向に屈折させます。そのため、 対象物が大きく見える一方、

太陽の光を一点に集中させることができます。つまり光の「焦点を合わせる」わけです。

 

その結果何が起こるか。ご存知の方が多いとおもいますが、

一点に集まった光によって物を燃やすことができるわけです。

 

虫眼鏡を通さなければ、ただ単に周囲を明るく照らすだけの光ですが、

これを一点に集めることで大きな力が発揮されるのです。これが焦点を合わせることの威力なのです。

インターネットが普及し、現代社会は今まで経験したことのない、

高度情報化社会に突入しました。日々我々の周りには、様々な情報が溢れています。

 

それに伴い、我々がやるべきことも増えて来ます。いや、正確に言うと、

「やらなければいけない」と思っている事が増えているのです。

どういうことかというと、あなたが日々やっている事柄の中には、

実はやらなくてもいいことや、あまり力を入れなくてもいいことがたくさんあるのです。

 

そのことに気づかずに、全ての事柄に力を注いでいては、結局どっちつかずで終わってしまいます。

これでは、あなたがどれだけ明るい光を放っていたとしても、

何かを燃やすことはできない、すなわち仕事で成果を上げることができないのです。

 

仕事で成果を上げるためには、たくさんある仕事の中から一つだけに

集中しなければいけない時があります。

そのような集中を本書では

「セレクト集中」と定義します。

目の前の一歩に集中するステップ集中 その集中力の高め方とは?

多くの仕事の中から取捨選択して、一つの仕事に絞ったとしても、

その仕事が簡単に終わるわけではありません。なぜなら、あなたが

多くの仕事の中から考えに考えて選んだ仕事というのは、極めて重要な仕事だからです。

 

その仕事が単純に「ハガキを投函する」といった仕事であるはずがありません。

もっと複雑な仕事であり、すぐに終えられるようなものではないからです。

ここで、一口に仕事という表現を使っていますが、この言葉には

大きく2つの意味合いが含まれています。

 

一番目は、一つの単純な作業としての仕事。たとえば、ハガキを投函するなどというのは

一つの作業にあたります。それに対して、新しい商品を企画・制作・販売するとか、

講演会を企画するとか、学会を主催するなどというのは、一つの作業ではありません。

 

これらには、企画とか計画、あるいはプロジェクトといった言葉をあてはめるのが適切でしょう。

こうしたプロジェクトというものは、「多くの作業の集合体」なのです。

このような多くの作業をこなしていかなければならない時に、人間は何を考えるでしょうか。

 

牛を一頭全て食べるにはどうしたらいいか?と聞かれたら何と答えますか?

牛一頭なんて、どうやって食べるんだろうと悩むのではないでしょうか。

そんなたいへんなことはできないと。

 

しかし、サイコロステーキのような一口サイズの牛肉を食べろと言われたら、

誰でもぺろりと食べられます。実は牛一頭も一口サイズの肉が

たくさん集まった集合体に過ぎないのです。一日で全て食べるのは無理ですが、

毎日少しずつ食べていけば、いつかは全部食べ切ることができるのです。

 

ところが、人間は最初に「たいへんだ」と思い込んでしまうと、

あれこれ考えるだけで先に進めなくなってしまいます。その結果、

最初の一口を食べるまでにも多大な時間を要してしまうのです。

ちなみに牛一頭から取れる牛肉の量が約200kgと言われていますから、

毎日200gずつ食べれば1000日。朝昼晩200gずつ食べれば、

一年かからずに食べ終えることができる計算になります。

 

「富士山に登る」というプロジェクトも一見すごくたいへんそうに思えます。

しかし、 これもある作業の集合体に過ぎません。どんな作業かと言うと、

「一歩一歩、歩く」という作業です。一歩ずつ歩を進めていかなければ、

富士山の頂上まで登ることはできないわけです。

 

同じように、どんなプロジェクトにもたくさんのステップがあるわけですが、

途中のステップを飛ばして一足飛びに行くというわけにはいきません。

まずは目の前の一つのステップをクリアしなければ、次のステップに進めないわけです。

 

そして、目の前のステップに集中することが、結果として、全ての工程を

早く終わらせることにつながるのです。

このように目の前の一歩に集中することを私は「ステップ集中」と呼んでいます。

 

3、なぜ問題を速く解けるようになったのか その集中力の高め方とは?

脳の仕組みを考える   学習と脳内回路

さて、第1章で述べたような、一見あり得ない集中力をなぜ私が発揮することができたのか、

その理由を考えていきましょう。

 

まず第2章で最初に説明したスピード集中、つまり

「同じ作業 より短時間で仕上げる」方法について考えたいと思います。

 

そのためには、まず、「脳の仕組み」と「学習とは何か」ということを考える必要があります。

脳波というのを聞いたことがあるかと思います。

人間の体の中は、いたるところで微弱な電流が流れています。

心臓も電気信号によって筋肉が収縮し、規則正しく動いています。

骨格筋といって、腕や脚の筋肉も同様です。

やはり電気刺激によって筋肉が収縮し、腕を曲げたり、歩いたり、走ったりできるのです。

心臓の筋肉の電気活動を記録したものが心電図、

骨格筋の電気活動を記録したものを筋電図と言います。

それに対して、脳の電気活動を記録したものが、脳波なのです。

 

心臓の電気活動に比べると脳の活動は複雑です。いろいろな電気の波が入り混じっています。

しかしながら、話を単純化して考えれば、何かを新しく学習するということは、

脳の中に新たな電気の流れ、つまり新しい電気回路ができることだと言えます。

何かを学習し、それに上達するということは、脳の中の新しい回路が強固になり

電流がスムーズに流れるということなのです。

 

Abandon(日本語の意味は“捨てる”)という英単語の意味を覚えたとします。

最初のころは、abandonという単語を見ても、日本語の意味が

すぐに思い浮かばないことがあります。そのような時は、まだ脳の中の

新しい回路が強固になっていない状態です。電気の流れが不安定で途切れ途切れのため、

単語の意味をすぐ思い出せたり、思い出せなかったりするわけです。

ところが、「abandon = 捨てる」「abandon = 捨てる」という単語を繰り返し見て、

思い出す練習をしていると、だんだんスムーズに思い出せるようになります。

 

この状態は回路の流れが安定して、スムーズになった状態です。

このように繰り返し、新しい回路に電流を流してあげることで、

回路が安定し電流の流れがスムーズになるのです。

 

電流の流れがスムーズで速いということは、すなわち、英単語をすぐに思い出せたり、

数学の計算問題を素早く解ける状態なわけです。

 

なぜ、集中力が高まったのか? 宿題をひたすら速く解くことに集中した小学校時代

脳の回路の仕組みは何となくご理解いただけたでしょうか。

要するに、脳の中の回路の流れを速くすることさえできれば、

同じ作業を短時間で仕上げる「スピード集中」が可能になるのです。

 

私の場合、こと勉強に関していえば、幼いころから、

このような回路の流れを速くする作業を無意識のうちに行なっていました。

おそらく、私だけでなく、東大理Ⅲ合格者の中には

同じような傾向の人が多いのではないかと思います。

 

ニワトリと卵の関係ではないですが、もともと脳内回路の流れが速い、

つまり頭の回転が速かったので、勉強が短時間でできたのか、

勉強を短時間でこなすよう努めた結果、脳内回路の流れが速くなり、

勉強がより短時間でできるようになったのか、そのあたりを検証するのは困難です。

 

しかし、後述するように、このような技術は誰でもある程度のレベルまで

後天的に獲得できるものだと私は考えています。

小学校低学年のころの私は、学校から帰るとまず宿題を終わらせていました。

といっても所要時間は 15 分です。決してじっくり取り組むということはしませんでした。

あくまでスピード主義で、短時間で終わらせることに主眼を置いていたのです。

 

なぜなら、宿題を短時間で終わらせて早く遊びたかったからです。

当時の私は、漫画に凝っていました。仮面ライダーなどの作者として知られる

石ノ森章太郎さんの漫画が大好きで、いろいろな作品を読んでいました。

ただ単に漫画を読むだけでなく、自分で実際に漫画を描き、

「将来は漫画家になろう」などという野望(?)も抱いていました。

それで、宿題を早々に終わらせては、漫画をひたすら描いていたのですが、

そんな私の姿を遠目に見ていた母は、私が熱心に勉強をしているのだと思い込み、

「最近、敏宏はよく勉強しているねえ」などと褒められたこともありました。

本当は遊んでいただけなのに、褒められて複雑な思いをしたことを今でも覚えていますが、

母が本当に私が勉強していると思ったのか、それとも漫画を書いているのを知りつつ、

そう言ったのか、今となっては確かめることはできません。

 

というのも、その後、私の運命を決定づけたと言っても

過言ではないできごとが起きたのです。

私が小学校 5 年生の秋、母が病に倒れ、帰らぬ人となったのです。

集中力を高めた勉強法 計算ドリルと漢字ドリルをひたすら繰り返す

私が小学校5年の春、母は体調不良を訴え病院に検査を受けに行きました 。

私は検査の結果を知らされませんでしたが、ほどなく母は入院することになりました。

すぐに退院するかと思いきや、待てど暮らせど母は帰って来ません。

夏休み一時期退院を許可されたものの、2週間も経たずにまた入院、

そして秋には帰らぬ人となったのです。

 

このことがきっかけとなって、後に私は医学の道を志すことになるのですが、

それはそれとして、相変わらず私は宿題を短時間でこなすことに命をかけていました。

小学校5,6年の時の担任の先生の出す宿題はちょっとユニークなものでした。

 

どんなテーマでもいいから、とにかくノート5ページ分勉強する、それが毎日のテーマでした。

もし母が生きていたら、私に何か日々のテーマを与えてくれたかも知れません。

しかし、そんな助言をしてくれる人は誰もいません。私としては、

とにかく宿題は短時間で終わらせて遊びに行ったり、テレビを見たりしたかったので、

必然的に(?)テーマは絞られました。何をやったかというと、当時学校から

教材として配布されていた計算ドリルと漢字ドリルをひたすら繰り返したのです。

 

今日、計算をドリルをやったら明日は漢字といった具合にとにかく繰り返しました。

それも、とにかく5ページ書けばよかったので、なるべく大きい字で、

速く書くために汚い字で、ひたすら繰り返したのです。

しかし、私のノートの内容に関して担任からクレームが入ることは一度もありませんでした。

とにかく早く終わらせることだけに集中しました。

結果的に、この作業が私の集中力を高めることになったのです。

 

私はこの作業を2年間続けました。

毎日こればかりやっていると、どのようなことが起こるでしょうか。

特に意識して覚えたわけでもないのに、漢字テストはいつも満点。計算もやたらと速くなりました。

もうおわかりだと思いますが、私がやったこの作業は、脳の中の新しい回路を強化するのに

最適な方法だったのです。当時の私はこんな脳の仕組みを知るよしもありません。

ただひたすら、遊ぶ時間を確保したい一心でやったことが、

自分の学力アップ、集中力アップに大きくプラスになっていたのです。

集中力を高めた勉強法:数学の問題も繰り返せばスピードアップ

このように小学校時代に獲得した比類なき計算力のおかげで、

私は中学以降も計算で困ることはありませんでした。

むしろ、計算の速さならだれにも負けないくらいの自信をもっていました。

計算力アップのための脳内回路の強化法を無意識のうちに身につけていたわけです。

 

「では、文章題はどうなのか」と疑問を持たれる方もいると思います。

結論から言うと、文章題でもやるべきことは同じなのです。

文章題で時間がかかるポイントは主に2つです。

ひとつは問題を読み、解き方を考える時間です。

 

そして、もうひとつは計算に要する時間です。

私は計算に関しては既にスピードがあったので、あとは解法を考える時間を短縮すれば、

全体の所要時間はぐんと短くなるわけです。

これもやはり、脳内回路の理論からすると、繰り返し同じ問題を解けば、

脳の中の新しい回路が強化され、解法のパターンも覚えられるし、

問題を解くスピードも速くなるのです。実際のところ、私は同じ参考書や問題集を

繰り返すのがあまり好きではありませんでした(小学校時代のドリルは別ですが)。

 

むしろ、あれこれと複数の参考書や問題集に手を広げる方でした。

「それでは話が違うじゃないか」と思われるかも知れませんが、

別な問題集をやったからといって、数学の問題が無限にあるわけではありません。

多少数値や設定が異なっても、実質ほとんど同じ問題が大半なのです。

過去の入試問題をそのまま載せているものも多数ありますから、

別な問題集でも結果的に同じ問題を繰り返すことになるのです。

 

こうして、結果的に私は大学入試の勉強でも同じ問題を繰り返すことになったわけです。

そして、また無意識のうちに脳の中の回路を強化していたのです。

集中力を高めた勉強法:英語速読を可能にした原書読みとSIM式

前述したように、私は東大入試の本番、持ち時間2時間の英語の試験で、

1時間で問題を解き終わり、時間を持て余してしまいました。

このような離れ業?を可能にするためには、当然のことながら、英文を速く読める必要があります。

 

当時の私は、英文を速く読もうという意識を持ったことはありませんでした。

にも関わらず、結果的に他の人よりも速く英文が読めるようになっていたわけです。

まあ速いと言っても、ネイティブの人に比べたら、はるかに遅いわけですが、

一般的な受験生のレベルからすると、かなり速いレベルだったのだと思います。

 

では、当時の私はいったい何をしていたのかというと、これもいたって単純です。

私がやっていたことは、毎日通学の電車の中で英語の原書を読んでいたのです。

我々は英語に関してネイティブではないので、母国語である日本語の文章を読む

スピードに比べれば、英文を読むスピードははるかに遅いのが一般的です。

 

一般的な日本人の日本語の本に関する読書速度は、1分間に

400から600文字と言われています。最近の一般書は、

文字も大きく、間隔も広いので、だいたいこのスピードで1分間に1ページ読めると思います。

 

ところが、日本の受験生レベルで英語の小説を1分間で1ページ読める人はまずいないでしょう。

当時の東大入試の英語の問題を私が調べたところ、およそ6ページの分量でした。

最近の英語の問題を調べてみると、1ページの単語数が250から300語です。

 

ネイティブなら1分間ですらすら読める分量ですが、ネイティブでない、

日本の受験生にとって、6ページの分量は相当きついものがあります。

そこで、まず量の多さに対する恐怖心を無くし、かつ英語力をアップするために、

私が採った方法が「毎日原書を6ページ読む」という方法だったのです。

もうおわかりだと思いますが、「英文を読む」という脳の回路を鍛えるためには、

当然頻繁に電流を流す必要があります。期せずして、私が採用した作戦は、

脳内回路強化に役立っていたのです。さらに、もう一点、英文を速く読むために

重要なことがあります。それは、返り読みを止めるということです。

英語と日本語の文法は全くことなるため、語順も全然違います。

従って、英語を日本語らしく訳そうとすると、どうしても返り読みが必要になります。

He's the boy whobroke the window. という英文を訳すと、

「彼が窓ガラスを割った少年です」となるのが一般的です。

しかし、英文を読んで内容を理解するだけなら、このような返り読みは必要ありません。

「彼は、その少年です。彼が壊した。窓ガラスを」といった具合に、

語順通りに意味を捉えていけば、内容も十分理解できるし、時間のロスも減るわけです。

これは英文を読む時だけでなく、英作文にも役立ちます。

当時、SIM = SimultaneousInterpretation Method(同時通訳方式)という、

英語の講座があり、こうした語順通りの読み方を提唱していました。

私は、実際に受講したわけではありませんが、自己流でこの方式を真似したという次第です。

こうした工夫の結果、私の脳内英語回路は強化され、他の受験生よりも

速く英文が読めたというわけです。しかし、決して人並み外れた芸当ではありません。

ネイティブなら私よりはるかに速く英文が読めるわけです。

英語のネイティブでない日本人でも十分可能なレベルなのです。

レポートを短時間で仕上げる集中力 その高め方とは?

医学部で履修する科目の一つに生理学があります。

一口に生理学といっても、かなり幅が広いのですが、

簡単に言うと「生命現象について研究する学問」となります。

前述したように、心臓の筋肉が収縮した時の電気信号を記録すると、心電図になるわけですが、

なぜこのような減少が起きるのか、といったことを検証したり、実験したりするわけです。

実際、私が学生の時に心電図に関連した実習がありました。私はよく覚えていないのですが、

実際に自分の心電図も録った記憶があります。私がよく覚えていないのは、

記憶が薄れたというよりも、あまり真面目に実習に参加していなかったからです。

つまり、覚えてないというよりも、もともと記憶にないわけです。

そうは言っても、実習をやれば必ずレポートの提出が義務付けられます。

今思えば恥ずかしい話ですが、当時の私はレポートなどどこ吹く風で、遊び呆けていました。

そんなある日、自分のアパートに帰ると、留守番電話に友人からメッセージが入っていました。

内容を簡単に説明すると、

「今日が生理学のレポートの提出期限である。みな友人宅に集まって

必死でレポートを書いている。今からなら、まだ間に合うから、友人宅に来るように」

といったものでした。当時はまだ携帯電話などない時代です。

留守番電話を入れている人も少なかったのですが、私はサークルなどの

連絡のために留守電を入れていたことと、良き友人たち?に恵まれたために、

この実習の締め切りを逃さずにすんだわけです。

さて、急いで友人宅に行くと、確かにみな必死でレポートを書いていました。

私はとにかく宿題の類に時間をかけるのはイヤな性格なので、

この時もいかに速くレポートを仕上げられるかを考えました。

そして、一人の友人から、ほぼ仕上がっているレポートを借りて、

それを適当に写し始めました。あまり、細かいことは気にせず、

字が汚くても気にせず、とにかくスピード重視です。

そしてレポートが佳境に差し掛かった時に一つの問題が生じました。

それは、心電図のコピーをレポートに貼らないといけないということでした。

当時は自宅にコピー機を持っている人などいません。5分ほど歩いて

コンビニまで行かねばなりません。

 

しかし、私はそんな時間をかける気はさらさらありませんでした。

「べつに丁寧にコピーなどしなくても、手書きで写せば良いのではないか?」

と考え、これまた適当に心電図を書き写して、オシマイです。

この時、レポート作成に40分くらいかかったと記憶しています。

私の記憶が正しければ、これが、私がレポート作成に要した時間の最長で、

他は全て30分以内で仕上げたと記憶しています。

こういうやり方は決してお勧めできるものではありませんが、

この中にも実は作業を短時間ですませるためのエッセンスが詰まっています。

資料の収集・整理に要する時間、構想を練る時間、資料をコピーする時間など

時間のかかる部分を全てカットしたわけです。

「拙速」という言葉があります。「できはよくないが、仕事が速いこと」を言いますが、

まさに私のやり方は拙速の極みとも言えます。

誰でも集中力を高めることは可能:例タイピング

前章で私が実際に行った「集中」の具体例を挙ましたが、率直な感想はいかがでしょうか。

「やはり、東大に入るくらいだから、脳みその作りが特殊なんだろう」

なんて思われている方も多いと思います。

 

しかし、普段の私を知る人なら、わかると思いますが、

決して頭の回転が特別速いわけでもなく、物事をスピーディにこなしているわけでもありません。

それなのに、ある特定の状況においては、このような集中力を発揮できるわけです。

ですから、このような所業は決して特殊な能力を必要とするものではなく、

誰でも可能なものだと言えるのです。

 

例として、タイピングを考えてみましょう。

今や一人に一台はパソコンを持つ時代ですから、 誰でもパソコンで文字の入力をすると思います。

しかし、この入力作業、すなわちタイピングですが、その速度に関してはかなりの個人差があります。

日本情報処理検定協会の日本語ワープロ検定では、4級の場合、

10分間の入力文字数が200文字以上となっています。しかし、これが1級になると、

10分間の文字数は700字以上です。なんと3倍以上の開きがあります。

 

実際、私達の周りを見渡せば、4級どころか、はるかに遅い人もたくさんいますし、

逆に、ものすごいスピードで打てる人もいるわけです。

 

いったい、この差はどこから生じるのでしょうか。

生まれつきタイピングができる人などいませんから、天賦の才能だなんて思う人はあまりいないでしょう。

基本的に、このようなタイピング速度の差は

「きちんとしたトレーニングを受けたかどうか」 によります。

1級レベルで入力が出来る人は、正しい入力の仕方を教わり、

正しいトレーニングを受けているだけなのです。

 

実際、私も「特打」というタイピングソフトを使って練習しましたが、

初めは4級レベル以下だったのが、毎日訓練を続けて行くと、1級レベルで打てるようになりました。

タイピング速度が速い人は、同じようにタイピングソフトで練習したり、

あるいはタイピングの学校に通うなどして、正しいやり方とトレーニングを受けているわけです。

自己流の打ち方でもある程度の速度は出せると思いますが、正しい打ち方で

ブライドタッチを行わないと1級レベルは難しいでしょう。

 

しかし、逆に言えば、正しいやり方さえすれば、誰でもこのレベルまで到達できるとも言えます。

私が勉強においてやってきたことは、期せずして、このタイピングの訓練と

同じようなことをやっていたに過ぎないのです。ですから、みなさんも

同じやり方をすれば、同じような結果を出すことは可能なのです。

 

ポイント1  時間を制限して集中力を高める ・・パーキンソンの法則

時間がたっぷりあれば、いい仕事ができる。

あるいは、時間がたっぷりなければ、いい仕事はできない。

そのように思っている人が、読者の中でも多いのではないでしょうか。

しかし、本当にいい仕事をするためには、この考えが間違いだということを、

まず最初に認識する必要があります。パーキンソンの法則というのをご存知でしょうか

近年は高齢者の増加に伴い、脳の機能に異常が生じる病気が増えており、

そのひとつである、パーキンソン病が有名になっていますが、そのパーキンソンではありません。

これは、イギリスの歴史学者・政治学者であるシリル・ノースコート・パーキンソンが

自著「パーキンソンの法則:進歩の追求」の中で提唱したものです。

その第一法則が「仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する」

というものです。例えば、メールの返信をする時、時間がなくて急いでいるときは、

簡単な内容で済ませますが、なまじ時間があると、つい丁寧に書きすぎて

時間がかかってしまった経験はないでしょうか。このように、時間が十分あると思うと、

余計なことに手間をとってしまい、結局制限時間いっぱいまで仕事が終わらない状況に陥るのです。

この話を聞いて、耳が痛い人が多いのではないでしょうか。時間が十分あると思って、

ついだらだらしてしまったり、ツイッターやフェイスブックなど仕事と関係のないことで

時間をつぶしてしまった経験がないでしょうか。逆に、時間がたっぷりあったが、

予想以上に仕事が速く進み、持ち時間の半分で仕事が終わったなんて経験はあまりないはずです。

こうした現象からわかるように、同じ作業を短時間で仕上げるための最初のポイントは、

ずばり、時間を制限することなのです。締め切りや時間制限を意識することなしに、

作業時間を短縮することは不可能と言っても過言ではないのです。

時間がたっぷりあると思っていると、結局ダラダラ仕事をして、持ち時間を使い切ってしまう。

計測できるものは改善できる 〜見える化で集中力を高める方法〜

数年前、『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』

という本がベストセラーとなりました。これは、経営学者として有名な

ピーター・F・ドラッカーの著書をモチーフとしてストーリー仕立てにした

ビジネス書ですが、NHKでアニメ化されたり、映画化もされ、

ドラッカーは一躍ブームになりました。このドラッカーの著書

「Management」の中にWhat gets measured gets managedという表現があります。

これは直訳すると「計測できるものは、管理できる」という意味になります。

経営においては、数字に基づいて管理をすることは当然必要になってきますが、

企業経営に限らず、あらゆる分野でこの原則はあてはまります。

つまり、あなたが今取り組んでいる何らかの作業において、改善をしたいのであれば、

計測はとても重要な鍵になるのです。言い換えれば、「計測できるものは改善できる」のです。

たとえば、ダイエットにおいて、体重を全くチェックせずに減量を行うのは極めて困難です。

そもそも体重自体が指標であり、目標なわけですから、それを計測するのは

当然必要になります。また、スポーツの分野も同様です。多くのスポーツにおいて、

記録が伴います。フルマラソンを例に挙げれば、1965年には

日本の重松選手が出した2時間12分0秒が当時の世界記録ですが、

2011年には、ケニアのマカウ選手が2時間3分38秒という記録を打ち出し、

いまや2時間の壁を切る日もそう遠くはないとまで言われています。

なぜ、これほどまでタイムが短縮したか。当然、様々な要因が考えられますが、

やはり最も大きな要因はマラソンのタイムが「計測できる」ものであるということです。

もし、マラソンのタイムが計測できず、皆何となく、感覚だけを頼りに走っていたとしたら、

ここまでの記録短縮はなかったでしょう。

 

マラソンに限らず、全ての「計測できる」スポーツにおいて、次々と世界記録が

塗り替えられています。まさに「計測できるものは改善できる」のです。

したがって、この本を読んでいるみなさんが、何かの作業時間を

短縮したいと望んでいるのであれば、「時間を計測する」という行為は、

極めて重要なポイントになると言えるのです。

 

スタミナ集中 〜集中力を高めるエネルギー管理の法則〜

血糖値とスタミナ集中 脳のエネルギー源はブドウ糖

「スタミナ集中」とは、長時間集中力を持続させる

能力や技術を指していますが、これも大きく 2 つに分けられます。

 

一つは我々医師が行う手術のように、 長時間ぶっ通しで休みを全く取れないようなもの。

テニスやサッカーの試合などもこれと同じ範疇に入るでしょう。

それに対して、軽い休憩が可能な仕事。例えば会社で書類を書き上げるとか、

出版社のスタッフが新刊の編集で締め切りに追われている場合などは、

長時間の集中が必要とは言っても、こまめに休憩を取ることは可能です。

いずれの場合にも、スタミナ集中を可能にするためには、

血糖値が重要なキーになります。なぜなら、我々の活動の基になっているのは、

我々の思考、すなわち脳の活動であり、 脳の活動の源になっているのは、

糖分、つまりブドウ糖だからです。

我々が体を動かすためには、手足の筋肉を収縮させる必要があります。

この時も当然エネルギーが要ります。我々が摂取する栄養素は

5 大栄養素と呼ばれ、糖質、脂質、タンパク質、ビタミン、ミネラルに大別されます。

この中で筋肉を動かすエネルギー源になり得るのは、糖質と脂質とタンパク質です。

では、脳のエネルギー源も同じかと言うと、これが違うのです。

脳のエネルギー源は糖質、なかでもブドウ糖だけなのです。厳密には、飢餓状態になると、

ブドウ糖以外にケトン体というものもエネルギーとして使われますが、

これはどちらかと言うと、特殊な状況なので、普段脳のエネルギー源として使われるのは

糖分だけだと考えて問題ありません。では、頭を働かせるためには、

どんどん糖分を摂れば良いかというと、そういうわけにもいきません。

例えば、3 時のおやつにケーキを食べても、夕方になってお腹が

急に空いてきたという経験はないでしょうか。

このように強い空腹を感じる時というのは、血糖値が急激に低下している状態です。

先ほどから説明しているように、脳のエネルギー源は糖分だけですから、

血糖が下がり過ぎては困ります。そこで空腹を補うために、またケーキを食べたりしたら、

カロリーオーバーでどんどん太ってしまいます。しかも、2~3 時間すると、

また血糖値が下がって空腹になるのです。これでは、集中力どころではありません。

それではいったい、どのようにすれば血糖値を安定させられるのか。

その仕組みを考えていきましょう。

 

甘いものを食べると血糖値が乱高下する〜集中力を高める食事を知る〜

甘いもの、つまり糖質を多く含んだ食品を食べると、美味しくてしかも空腹感が

すぐに解消されます。しかし、数時間後にはまた急激な空腹が襲う。

多くの人は、この時「エネルギーが足りない」と判断し、また甘いものを食べてしまいます。

しかし、実はこの解釈が間違っているのです。

糖質は、消化・吸収が速いため、図のように、糖質を摂取すると、

血糖値は急激に上昇します。この時、体内で何が起こるかというと、

過剰な血糖値の上昇を抑えるために、膵臓からインスリンというホルモンが大量に分泌されます。

インスリンは血糖値を低下させます。低下するということは、血液中に流れていた

ブドウ糖がどこかに消えてしまうわけ すが、どこに行くかというと、

脂肪としてあなたの体内に蓄えられてしまうのです。

本来エネルギー源として使うはずだった糖分が、その目的を果たせず、

脂肪になってしまうのです。

しかも、問題はこれだけではありません。血糖が急激に低下してくると、

強い空腹を感じます。今の説明からわかるように、本当は体内に

エネルギーの元は有り余っているのですが、ほとんどの人は強い空腹を感じると、

エネルギーが足りないと勘違いしてしまい、 すぐにまた何か、手っ取り早く

血糖値が上がる食物を摂ってしまうのです。

その結果、また血糖値が急上昇し、インスリンが急激に分泌され、血糖値が急降下し、

そして脂肪が溜まってしまうという悪循環に陥ってしまうわけです。

このように、血糖値が乱高下していると、どんどん太ってしまいますし、

仕事においても安定したパフォーマンスを発揮することはできません。

したがって、スタミナ集中を実現するためには、血糖値の乱高下を避ける必要があります。

 

では、どうすれば、血糖値の乱高下を避け、血糖値を

安定させることができるのかを考えていきましょう。

 

血糖値を安定させる GI 値と血糖の変動〜集中力を高める食事 その2〜

血糖値を乱高下させると良くないという話をしましたが、これは大人だけの問題ではありません。

最近の子どもは切れやすいなどと一時期言われていましたが、これも食生活に

問題があるのではないかと言われています。コーラなど糖分のたくさん入った炭酸飲料や、

甘いお菓子やスナックばかり摂っていると、血糖値は乱高下してしまいます。

そして、血糖値が低下して電池切れになった時に切れやすくなるのではないかと言われています。

同じように、アメリカでも貧しい家庭の子ども達のほうが、肥満が多いということが

問題になっています。なぜかと言うと、やはり彼らもコーラやスナック、マクドナルドの

ハンバーガーのようなファストフードばかり摂っているからです。

さて、血糖値を安定させるためには、まず血糖値が急上昇しないようにする必要があります。

ここで役立つのが、GI 値というものです。GI とは glicemic index(グリセミック・ インデックス)

の略ですが、簡単に言うと、血糖の上がりやすさの指標です。ブドウ糖を100 として、

それと比べて血糖の上がりやすさを数値化したものです。この数値が 100 に近ければ、

血糖値が上がりやすい、逆に数値が低ければ、血糖が上がりにくい食品ということになります。

表を見ていただくとわかるように、麺類・パン類等の炭水化物つまり糖質は比較的高い

GI 値を示しています。朝食をパンとコーヒーで簡単に済ませるという人も多いと思いますが、

パンだけだと GI 値が高いので、血糖が乱高下してしまい、お昼前にはお腹がすいてしまいます。

お昼を軽く蕎麦だけなんていう人も多いと思いますが、やはり血糖値が乱高下するので、

3 時過ぎにはお腹がすいて来て、ついお菓子をつまみ食いしてしまうのです。

逆に肉類や卵、乳製品、野菜類などは比較的 GI 値の低いものが揃っています。

このような食品を摂った方が、血糖が急上昇しにくことが数々の実験で証明されています。

また、 同じ糖質、つまりパンやケーキなどを摂る場合にも、糖質だけを摂るよりも、

先に野菜やタンパク質などを摂ってから糖質を摂取した方が、血糖が上がりにくいことも

わかっています。血糖値が上がりにくいということは、下がる時も傾斜はなだらかなのです。

従って、 急に血糖値が下がって電池切れということもなくなります。

以上からおわかりのように、スタミナ集中を実現させるためには、

長時間安定したエネルギー供給が必要です。そのためには、血糖値の乱高下を避け、

血糖値を安定させる必要があるのです。血糖値を安定させるためには、

GI 値の低い食品を積極的に摂る必要があります。

 

一日二食が理想的   〜集中力を高める食事 その3〜

最近、某医師が書いた若返る方法についての本がベストセラーになっています。

その本の中で著者は食事についても触れていますが、「食べ過ぎは良くない。一日一食で十分」と

いった趣旨のことを書いています。ところが、今度は別な医師がこの意見に対抗する本を出し

「一日一食なんてもってのほか、やはり一日三食食べなければいけない」といったことを書いたため、

「いったい、どちらが正しいんだ?」とにわかに論争になっています。

実のところ、人間の体を使って実験をするのは難しいので、結論は半永久的に出ないと思います。

なぜなら、10年~20年という長い期間を必要とすることと、非常に多くの要素が絡んできて、

原因を特定することが困難だからです。しかし、動物の場合には、カロリー摂取を

通常の6割程度に減らした方が長生きできるというデータが多数出ており、

「カロリーを制限すると長寿遺伝子が発現して長生きできる」というのが定説となっています。

一方、我々人類はというと、昔に比べて明らかに過食、運動不足、肥満傾向にあります。

それに伴い、糖尿病、高血圧、高脂血症のような生活習慣病が増え、その結果動脈硬化から

心筋梗塞などの心臓病を発症する人が増えているのです。それにも関わらず平均寿命が

伸びているのだから、過食でも良いのではないかという意見もありますが、医学の進歩の

おかげで生き長らえる人が増えているのであって、決して皆が元気に長生きしているとは

言えないのです。

 

従って、やはり過食は良くない。適度な量の食事を摂るのが好ましいということになりますが、

ここで問題になるのは、食事の回数よりも、食事の量、特に摂取カロリーです。

コンビニの弁当屋、ファミリーレストランのメニューにはほとんどカロリーや塩分が

表示されていますが、ちょっと脂っこいものだと、簡単に1000キロカロリー前後に

なってしまいます。ということは、このような食事を三食摂り、その上、お菓子などを

つまみ食いしたら、一日3000キロカロリーをオーバーしてしまうのです。

これではさすがに多すぎますから、一食のカロリーが減らないのであれば、

一日二食も摂れば、十分なのです。

 

一日二食の効用       〜集中力を高める食事 その4〜

私の場合、一日二食を実践していますが、何も弊害はありませんし、むしろ有益な点の方が

多いと感じています。まず、何と言っても、日中の仕事時間を有効に使えます。

昼食を摂ると、どうしても眠くなるので、眠気を覚ますために仮眠を取ると、食事の時間

プラス仮眠の時間で都合1時間近く使ってしまいます。しかし、昼食を摂らないと、

そのような眠気も来ませんので、この1時間を有効に使えるのです。

ただし、朝食はしっかり摂る必要があります。先述したようなパンとコーヒーだけなんていう

パターンでは、さすがに一日持ちません。ちなみに私の普段の朝食は、ごはん一膳、

目玉焼き2つ、サラダ、焼き魚、納豆プラス生卵、簡単なデザートといった感じです。

タンパク質中心で低 GI 値の食品が多いので、腹持ちが良く、夕方まで食べなくても

しっかり働けます。それと、一日二食を実践してから気づいたのですが、中途半端に

昼食を摂ったり、間食を摂ったりすると、夕方になってかえって空腹感が強くなるのです。

それはなぜかというと、図の青線のように、血糖値が安定して、なだらかに低下していたところ、

糖質を摂ると、血糖値が急上昇します。すると、前述したような血糖値の乱高下が

起きてしまうのです。なだらかに低下する場合は、あまり空腹感が強くないのですが、

一旦上昇した血糖値が急激に低下するので、その時により強い空腹感を感じるのです。

したがって、一日中安定したパフォーマンスを持続させるためには、このような血糖値の

乱高下を起こさない方が良いのです。しかし、どうしても空腹感が強い場合には、

ソイジョイのような低 GI 値の食品を摂るのが良いでしょう。拙著「加圧するめダイエット」

にも書きましたが、するめも低カロリー高タンパクなので、ニオイが気にならない

環境であれば、オススメです。

 

水分は十分補給 水かスポーツドリンク    〜集中力を高める水分の摂り方〜

食事は一日二食を基本、必要であれば、間に低 GI 値の食品を軽く補う形で十分と書きましたが、

水分はどうでしょうか。水分に関しては、朝摂って夜まで無しというわけにはいきません。

我々の尿はコンスタントに排出されていますし、不感蒸泄といって、気道や皮膚から

気づかないうちに一日800ml 前後の水分が蒸発しています。また汗をかく量が多ければ、

その分多くの水分が失われます。このように、私達が気づかないうちに水分は

どんどん失われていきますので、十分な水分補給が必要になります。

私の場合、午前中だけで、2リットルくらいの水を摂ります。

外来の診察を行う時も、診察の合間に少しずつ水分を補給します。これは、

アンチエイジングに詳しい慶応大学の坪田教授も推奨している方法です。

実際試していただくとわかりますが、水分を摂らない場合に比べて、

疲れにくくなるのを実感できると思います。

具体的に何を飲むかというと、単なる水です。市販のミネラルウォーターか、

水道水をカルキなどを抜いて浄化したもので十分です。水以外の市販のドリンクは、

様々な添加物や糖分が入っているため、オススメできるものがほとんどありません。

水をたくさん飲むとどうなるかというと、その分たくさん尿が出ます。吸収された水分が

血液中に入ると、血液が薄まるため、人間の体は、血液の濃度を元に戻そうとします。

従って、腎臓を通して多くの水分が排泄されるのです。

また、生活習慣病の一つに高尿酸血症という病気があります。これは、血液中の尿酸という

物質の濃度が高まる病気です。尿酸とは、細胞の核の中にあるプリン体という物質が代謝されて、

最終的に生成される物質で、タンパク質などが代謝される最終過程で生成されます。

この尿酸の濃度が高すぎると、関節に結晶を作って炎症を引き起こします。これが

いわゆる痛風です。血液中にこの結晶が寄り集まって石のようになると、腎臓結石などの

原因になります。尿酸は主に尿中に排泄されるので、水分をたくさん摂れば、その分多く

排泄されます。したがって、水分を十分摂ると、高尿酸血症の改善にもつながるのです。

お茶などもペットボトル入りのものが最近はたくさん市販されていますが、お茶を大量に

摂取するのはオススメできません。なぜかというと、お茶に含まれているカテキンなどの物質が

血糖や血液中のコレステロールを低下させる作用があるからです。食事の前後などに

飲むのには良いのですが、本書で勧める一日二食の場合、日中血糖値がゆるやかに

低下している時にお茶を飲むと血糖が下がり過ぎてしまい、気持ち悪くなってしまいます。

したがって、飲料としてオススメできるのは、水だけということになりますが、

長時間の手術などで途中でトイレに行けない時に、あまり尿意を催すのは困りものです。

そのような場合には、スポーツドリンクのように、アイソトニック(等浸透圧)といって、

血液の濃さと同等な飲み物を飲めば、あまりトイレに行かずにすみます。ただし、塩分や

糖分も含まれていますから、日常的に摂取するのはオススメできません。ここぞという時に

限定するのが良いでしょう。

もう一つ、とてもメジャーな飲み物としてコーヒーがあります。コーヒーはお茶ほど

血糖を下げないので、飲んでも支障はありません。ただし、砂糖を入れてしまうと、

血糖値の乱高下を引き起こしてしまいますので、砂糖を入れないことが大前提となります。

逆にミルクを入れるのは、血糖値が安定するのでオススメです。コーヒーは健康に良くないと

俗に言われますが、コーヒーを飲んだほうが長生きするとか、病気になる確率が下がるといった

データも多数出ており、一概に悪いとも言えません。また、コーヒーには覚醒効果があり、

作業効率も上がるので、適度に飲む分には問題無いと思われます。

 

疲れを取る技術 休息をこまめに取る  〜集中力を高める休息の取り方〜

本章のスタミナ集中のテーマは、長時間集中力を持続することですが、一般的に

デスクワークなどをする時に、「10 時間ぶっ通しで机に向かっていて、時の経つのも忘れていた」

などと言う人はほとんどいないでしょう。必ず皆さん休憩を取ると思います。

なぜ休憩を取るかというと、眠気を催したり、肩が凝ったり、腰が痛くなるなど、

集中力を持続できない要因がいろいろ出てくるからです。

 

作業中に眠くなった時、皆さんはどのように考えますか。

「だめだ。こんなことでは。まだ1~2 時間しか仕事していないのに眠くなるなんて、

気合が足りない」などと、自分を責める人が多いのではないでしょうか。

確かに TV ゲームが大好きな人が、ゲームの途中で眠くなることがないように、

作業に上手く集中できれば、あまり眠気は催さないでしょう。

しかし、眠くなる主な要因としては、やはり疲れがたまっていることが考えられます。

従って、いかに疲れを取るかということが問題になるのです。

このような疲れや眠気といったものは、血圧や血糖値のように簡単に

数値化できるものではありませんが、これをわかりやすく説明するモデルとして、

2プロセス・モデルというものが考えられています。図の上方のラインがプロセス S で、

睡眠負債と呼ばれています。睡眠負債とは、要するに「疲労」のようなものです。

それに対して、下のライン、プロセス C は覚醒閾値と呼ばれています。

このラインが上方にある時は、目がしっかり覚めている状態です。

このプロセス S とプロセス C の差が眠気ということになります。従って、朝目覚めた時は、

睡眠負債が少なく、眠気も少ないのですが、夜になると睡眠負債は多くなり、

覚醒閾値が下がるために眠気が強くなるというものです。

疲れがたまって、眠くて眠くてどうしようもなくなってから仮眠を取るというのは、

好ましくありません。なぜなら、疲れを自覚し始めた段階で既に作業効率が

低下しているからです。しかも、疲れきってから長時間仮眠を取ってしまうと、

目覚めたあと頭がぼーっとしてしまい、頭が冴えるまでに時間がかかってしまいます。

従って、あまり疲れが溜まらないうちに、短時間の休憩または仮眠を取るほうが

良いのです。ちなみに仮眠を取る場合は、20 分以内に抑えましょう。

長時間眠ってしまうと、眠りが深くなり、すっきり覚醒するのに時間がかかるからです。

ほんの数分でも仮眠を取れば、随分頭がすっきりするのを自覚できると思います。

 

 

セレクト集中

集中するためには、まず捨てること  〜集中力を高める”脳内断捨離術”〜

前述したように、この章で説明するセレクト集中は英語にすれば「focus」、

つまり焦点を合わせるという意味になります。

 

どんなに集中力が高くても、自分の目標と関係のないことに焦点を合わせていては、

成功はおぼつきません。目の前に課題が山積みなのに、それをそっちのけで

フェイスブックやツイッターに集中しても、仕事の成果は上がりません。

同じように、普段気づかないうちに、大事な集中力を余分なことに

フォーカスしてしまっていることが少なからず存在します。

それを認識することが必要になります。

 

まず、あなたが「やらなければいけない」と思っている事柄を全て書きだしていきましょう。

仕事は当然のこと、資格取得のための学習、同僚との飲み会、奥さんへのプレゼント等等、

思いつくもの全てを書きだしていきます。

 

全ての項目を書きだしたら、次のステップに移ります。

たくさんある項目の中で、「自分が本当にやらなければいけないこと」と

自分でやらなくても良いもの、つまり「他人に任せられるもの」、

そして、このどちらでもないもの、すなわち「やる必要がないもの」の3つに分類します。

 

例えば、3つ並んでいる仕事の中で、自分でやらなくても良いものがあるかも

しれません。もし仕事 C は部下に任せても良いと思えるのであれば、

「他人にまかせる」にまわします。同僚との飲み会も、冷静に考えて結果、

出なくても問題ないと判断すれば、「やらなくてよい」グループに割り振りましょう。

 

推理小説が大好きで、好きな作家の新刊を買いに行く予定だったとしても、

必ずしも自分で買いに行く必要はありません。他人に頼めるかもしれないし、

アマゾンや楽天で注文するのも、広い意味では「他人に任せる」ことで

時間の節約につながるのです。

 

このように、自分が本当にやるべきものをピックアップする、

逆に言えば、やらなくてよいものをどんどん切り捨てていくことで、

本当にフォーカスすべきもの、集中して取り組むべきものが浮かびあがってきます。

 

困難は分割せよ  プロジェクトを作業に分割する    〜集中力を高めるタスク管理その1〜

17世紀のフランスの哲学者・数学者で「方法序説」などの著作で知られる

デカルトの言葉に「困難は分割せよ」というものがあります。

仕事や勉強においても、一見困難そうに見えるものを分割するということが必要になってきます。

 

先ほどのリストの「自分でやるべきこと」の中に、「英会話をマスターする」と

「子どもにプレゼントを買う」というものがあります。

 

これらはどちらも「やるべきこと」に変わりないのですが、両者の間には大きな違いがあります。

それは何かというと、後者が具体的な作業なのに対して、前者は具体的な作業ではない、

いうなれば一つの大きな企画、 プロジェクトだということです。

 

そういった視点でもう一度考えていただくとわかると思いますが、

「英会話をマスターする」というのは、かなり漠然とした抽象的な表現なのです。

ここでは具体的な行動が示されていないのです。

 

では、実際何をすれば良いかというと、

「英会話のテキストを買う」「英会話学校に通う」「ipadで英会話の教材を聴く」

「海外に短期留学する」などなど、様々な作業が必要になります。

 

更に言えば、「一日に何ページテキストを進めるのか」

「どの英会話学校に週に何回、1回何時間通うのか」など

具体的な行動に落としこんでいく必要があります。

 

このように、セレクト集中のための第二ステップは、自分がやるべきことの中で、

具体的な行動・作業とそれ以外のものを分けること。

そして、プロジェクトや漠然としたテーマをより具体的な行動に落としこむことです。

これが、「困難を分割する」第一歩になります。

 

目標を意識し、最優先事項を選ぶ     〜重要なことに集中し、集中力を高める〜

ここまでのステップで、みなさんが「やるべきこと」はリストアップできました。

しかし、数あるリストの中から、どれを真っ先にやるか、どれに集中すれば良いのか、

そこがまだ決まっていません。

 

優先順位を決めるためには、何か基準が必要になります。

この場合、何が基準になるかというと、皆さんの目標です。

この作業をこなすことが、自分の目標達成のために重要かどうか、それを最優先の基準とします。

したがって、優先事項を選ぶためには、確固たる目標を持つ必要があります。

 

今、具体的な目標がないという人は、まず目標を設定しましょう。

図のようにビジネス、 プライベート、収入、健康面、ネットワークに関して、

10年先の目標を設定します。そして、10年先の目標から逆算して、

5年後の目標、3年後の目標と、順次目標を設定していきます。

 

これらの目標に対して、あなたの行動がぶれないように、

毎朝このシートを見て、自分の目標を確認しましょう。

 

もちろん、自分の方向性というものが、ずっと同じとは限りません。

徐々に目標が変わる可能性があります。その時は目標を修正すれば良いので、

まずは自分がやりたいこと、達成したいことを書いていきましょう。

 

毎朝この目標シートを眺め、それから優先事項を選べば、あなたの行動が

目標からぶれることはありません。もちろん100%とはいえませんが、

今までと比較したら、格段に目標へ向かう行動が増えるはずです。

あとは、自分が選んだ作業にとにかく集中すれば良いのです。

 

行動のあぶり出し       〜集中力を高めるために必要なツールやソフト〜

ここまで述べてきた作業を単純にノートに書きだしても良いのですが、

それだと、最初にランダムに書いた項目をまた別なページに順番を変えて

書き直す必要があります。これではちょっと面倒臭いので、少し工夫が必要になります。

 

あまりパソコンを使わず、アナログ的に作業することが多い人は、

ポストイットを使うのがお勧めです。これだと、書きだした項目の順序・配置を

自由に変えることができます。 しかも、手帳のスケジュール欄に張り替えれば、

予定を書き込む手間すら、かなり省くことができます。

 

パソコン中心で仕事をする人は、マインドマップのソフトを使うのがお勧めです。

マインドマップとは、イギリスの著述家トニー・ブザン氏が考案したもので、

図のように表現したい概念の中心となるキーワードやイメージを中央に置き、

そこから放射状にキーワードやイメージを広げ、つなげていくというものです。

有料のソフトも市販されていますが、 凝った絵を描くのが目的でなければ、

フリーソフトでも十分対応できます。ちなみに、私が愛用しているのは、

「FreeMind」というフリーソフトですが、とても使い勝手が良く、 重宝しています。

 

いずれにしても、自分のライフスタイルやビジネススタイルに合ったものを選ぶのが重要です。

そして、とにかく曖昧な項目や抽象的なプロジェクトを

なるべく具体的な項目に落としこんでいくのがポイントです。

 

ステップ集中を可能にする技術

前章で説明したセレクト集中によって、あなたがフォーカスすべき行動が

見えてきたと思います。しかし、それを遂行するためには、

短時間で実行可能な細かい作業に分割する必要があります。

そして、いかにモチベーションと集中力を高めてその作業をこなしていくか。

その具体的な方法を、この章で説明していきます。

困難な目標も細かいステップに分割する   〜集中力を高めるスッテプの分割〜

象を食べるにはどうすればいいか?こう質問されたら、皆さんはどう答えるでしょうか。

美味しいかどうかとか、保存の方法など現実的な部分はこの際無視して、

とにかく食べなければいけないとしたら、どうでしょうか?

ほとんどの人は「象なんて、あんな大きな生き物、食べられるわけがない」

と思うのではないでしょうか。しかし、「千里の道も一歩から」と故事にも言われるように、

一口ずつ食べていけば、いつかは食べ終わるのです。

ちなみに、体重 3 トンの象の筋肉が 1 トン(1000 キログラム)だとして、

ちょっと大変ですが、一日 1 キログラムずつ食べ続ければ、3 年以内に食べ終わる計算になります。

仲間と手分けすれば、もっと早く食べることも可能でしょう。

このように、量が多いもの、期間が長いものは、ぱっと見ただけで、嫌気がさしてしまい、

解決不可能なもの、できるとしても途方もなく時間がかかるものだと思い込みがちですが、

細かく分割していけば、サイコロステーキのように一口サイズになるわけです。

1000 ページくらいある分厚い本を読めと言われたら、多くの人は、

「こんな分厚い本は読めそうにない」と思ってしまいます。

しかし、どんなにページ数の多い本でも、1 ページ 1 ページの、あるいは

1 文 1 文の積み重ねでできていることに変わりはありません。

従って、 1 ページを読む手間は薄い本と何ら変わらないので順番に読んでいけば、

いつかは読み終わるわけです。

行動を更に細かく分割する   〜集中力を高める鍵はさらなる細分化〜

我々が普段何気なく行なっている作業も、実はもっと細かく分解することができます。

例えば、朝起きてから家を出るまでにも我々は多くの作業をこなしています。

朝起きて、 トイレに行く、顔を洗う、食事をする、歯を磨く、ドライヤーで髪を整える、

服を着替えるなど、簡単に挙げただけでもこれだけの作業があります。

中には、自分で食事を準備する人もいるでしょうし、朝シャワーを浴びる人は

更に作業が追加されます。 漠然と「朝出かける準備をする」と言うと、

これらの行為が一緒くたになっていて、どの作業にどのくらい時間をかけているのか、

よくわかりません。それを細かく分割することで、予想外に時間がかかる作業や、

時間を短縮可能な作業が見えてきます。例えば、歯磨きの時間をもっと短縮できるとか、

前日に服を用意しておくことで、着替えの時間を短縮できるなど、改善の余地が見つかるのです。

 

私がこのようなことに気づいたのは、私が専門とする「心臓カテーテル手術」において、

若手医師を指導する際に手術中の作業工程を分析したことがきっかけでした。

それまでは、 何となく「手術が早く終わった」とか「今日はいつもより時間がかかった」

といった感じに一喜一憂していたものが、作業ごとの時間を測定したことで、

それぞれの作業に要した時間が「見える化」できるようになったのです。

 

図のように、「心臓カテーテル手術」という一つの枠で捉えられていたものが、

幾つもの項目に分解できることがわかりました。例えば、GW(ガイドワイヤー)を

操作する技術と、 IVUS(血管内超音波)を操作する技術というのは、全く異なるものなのですが、

こうして分解してみないと、そんな単純なことにすら気づかないのです。

「歯を磨く」ことと「服を着替える」ことを全てひとまとめに「朝の準備」と捉えてしまうのと、

まさに同じ状況です。こうした分析の結果、

「今日いつもより時間がかかったのは、この作業に手間取ったのが原因だ」とか 、

「この医師はAという作業に時間がかかるが、もっと短縮できる余地がある」など、

色々なことが見えてきたのです。そして、各作業は、それぞれ異なる技術や操作を

必要とするものであり、一口に手術と言っても、必要なスキルは作業ごとに異なるため、

手術時間を短縮するためには、ひとつひとつの作業に集中し、時間を短縮すること、

そしてその積み重ねが、結果として手術全体の時間も短縮するのだということがわかったのです。

同じことがビジネスパーソンの仕事にも当てはまります。

数時間かかるような仕事でも分割していけば、短時間で達成可能な

細かい作業に分けられるはずです。そしてまずは目の前の作業に集中する、

それが「ステップ集中」の極意なのです。

 

やる気と集中力を生み出す報酬効果      〜集中力を高めるご褒美とは?〜

あなたがこなすべき膨大な作業をどんどん分割して、短時間で達成可能な

小さいステップに分けることができたら、あとは1つ1つのステップをクリアしていくだけです。

まずは眼の前のステップをクリアしなければ、次のステップはありません。

ここで問題になるのは、いかにやる気を出して課題をこなすかということです。

 

やる気とか気合と言うと、何か非科学的な響きを感じる人も多いかも知れませんが、

現代科学では、これらもちゃんと科学的に説明がつきます。やる気の源はドーパミンという

ホルモンで、このホルモンは我々が嬉しいとか楽しいと感じた時に脳の中で分泌されます。

このやる気のホルモンを意図的に増やすための有効な方法が報酬、

つまり「ご褒美」です。図は、サルを用いて報酬とドーパミンの反応を調べた実験の模式図です。

 

ランプが点いた後でボタンを押すと、ジュースがもらえるようになっていますが、

サルは最初、ご褒美がもらえることを知りません。たまたま、

ランプが点いた後にボタンを押して、ジュースがもらえると、サルの脳の中では

初めてドーパミンの分泌が増加します。ところが、この作業を繰り返すうちに、

サルは、ランプが点いた後にボタンを押せばジュースがもらえるということを学習します。

すると、サルの脳の中では、ランプが点いてご褒美を予測しただけで

ドーパミンが分泌されるようになるのです。このように、ご褒美を想像しただけで

ドーパミンの分泌が増える効果を「報酬予測効果」と呼んでいます。

我々人間の脳をリアルタイムで調べることは事実上困難ですが、

我々の脳もサルとほぼ同じような反応をしていると考えられます。

たとえば、子どもに、「この計算問題を解き終わったら、ご褒美にケーキをあげるよ」

と言うと、普段より張り切って短時間で問題を解きます。この時、子どもは

まだご褒美をもらっていないにもかかわらず、普段よりやる気を出しています。

つまり、子どもの脳の中ではドーパミンが分泌されているのです。

このように、我々の脳も、ご褒美を思い浮かべただけでやる気が出るという

便利な仕組みを持 っているのです。

 

ただし、一つ注意点があります。図の最下段のように、最後にもらえるはずの

ご褒美を省略してしまうと、やる気のホルモンドーパミンは一気に減少してしまいます。

ですから、必ずご褒美は出さないといけません。しかも、先延ばしせずに、

作業の終了直後に出すほうが良いと言われています。

こうした脳の仕組みを上手く活用すれば、より作業効率を高めることが可能なのです。

とはいえ、毎回ケーキをご褒美にしていては、食べ過ぎて太ってしまいます。

そこで、お金も手間もかからず、繰り返し使えて、健康も害さない「ご褒美」として、

私が考えたもの。それは何かと言うと、「時間」なのです。

時間をご褒美にする「ステップ集中」  〜集中力を高める究極のテクニック〜

報酬を予測しただけで脳内でドーパミンが増えて、やる気が出るということは、

毎回毎回高価なご褒美や形あるものを用意しなくても良いということです。

そこで、私は「時間をご褒美にする」という方法を考えたのです。

私は趣味でマラソンをやっていますが、多くのランナーは目標タイムを決めて

レースに臨みます。例えば、42.195 キロのフルマラソンで 4 時間を切ろう

という目標を立てた場合、1 キロを 6 分弱、およそ 5 分 40 秒くらいのペースで

走る必要があります。たいていのレースは 1 キロごとに表示が出ていますし、

GPS内蔵の時計を使えば、ほぼ正確に走った距離がわかります。それらを目安にして、

1 キロ毎に目標を達成できたかどうかチェックしながら走るのです。

「楽に走っているのに、設定タイムより短い時間だ」とか

「この 1キロは 設定タイムより遅れてしまった」とか一喜一憂しながら、

最終的なご褒美である「目標タイム達成」に向けて走っていくのです。

ゴールした瞬間、メダルのような、形のあるご褒美をもらえなくても、

目標タイムを切れたという、そのこと自体がご褒美になり、脳の中ではドーパミンが

さらに分泌されるのです。

 

この原理を仕事や勉強に応用したものが、ステップ集中なのです。

何か作業をする時に、 「この作業なら 10 分で終わる」といった具合に、

目標タイムを設定し、それより早く終わるように集中するのです。

このステップ集中を行うことによって、普段より作業効率を上げながら、

やる気も高まって楽しく仕事ができるのです。

作業時間を計測するメリット   〜集中力を高める以外のメリットとは?〜

この方法を続けていくと、集中力が高まるだけでなく、作業の所要時間を

正確に予測できるようになります。マラソンのトップランナーに

「自己ベストのタイムは?」と尋ねた時に、「だいたい2時間10分くらい」

なんて言い方はしません。正確なタイムを答えるはずです。

ところが、普段我々は仕事でも勉強でも、作業に要する時間を

かなりアバウトに予測しています。

「だいたい10分くらい、だいたい30分、だいたい1時間」といった感じです。

この仕事は「7分34秒で終わる」なんて言う人はまずいません。

しかも、アバウトに予測した時間が、実際にかかる時間と大幅に乖離していることがしばしばあります。

このように我々が予測するアバウトな時間を、私は「心理的時間」と呼んでいます。

それに対して、実際に作業に要する時間を「物理的時間」と呼んでいます。

この「心理的時間」と「物理的時間」は大幅にずれていることが多いのです。

 

しかし、この「ステップ集中」を続けることで、「心理的時間」と「物理的時間」の

ずれは補正されます。毎回時間を測定するのですから、当然といえば当然ですが、

作業時間を正確に予測できるようになるのです。

また、もう一つ副次的な効果として、今まで面倒くさいと思っていたことも、

できるようになります。その主な理由は3つあります。

まず一つは、ストップウォッチを押して時間の計測を始めたら

集中モードに入るというのを、条件反射にしてしまうことで、

多少面倒なことも、気持ちを切り替えて取り組めるようになります。

パブロフの犬ではありませんが、ストップウォッチを押した瞬間、

条件反射的に気持ちを切り替えられるようになるのです。

二つ目の理由は、前述したように所要時間が把握できるようになると、

面倒だと思っていた作業が、意外と短時間でできることがわかるからです。

「もっと時間がかかると思っていたけど、こんな短時間なら、さっさとやってしまおう」

という気持ちになるのです。

そして、三つ目の理由は、集中モードで作業に取り組むうちに、作業時間自体が

短縮されてくることです。作業時間が短くなれば、面倒くさい気持ちは減って、

抵抗感がなくなってきます。そうなると、さらに作業に集中できるようになって、

好循環が生まれてくるのです。

集中力を高めるステップ集中まとめ

1.自分がこれからこなす行動を、短時間で実行可能な細かい作業に分割する。
最小単位は、できれば30分以内。(なるべく短い方が良い)
2.その作業を終えるのに必要なタイムを予測する
3.ストップウォッチで時間を計測しながら、作業を進め。目標タイムのクリアを目指す。

4.目標をクリアできたら喜ぶ(これが実は重要。この時、脳の中でドーパミンが出る)

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